ファッションエディター 三尋木奈保が語る! 心の友のようなニット
三尋木奈保
1973年生まれ。メーカー勤務後、雑誌好きが高じてファッションエディターに転身。装いと気持ちのかかわりを敏感にとらえた視点に支持が集まる。おしゃれルールをまとめた著書『マイ ベーシック ノート』(小学館)は2冊累計18万部のベストセラーに。
心の友のように感じている冬の定番。いいニットがそばにいる安らぎを知ったら、寒い季節も好きになりました
「おおげさかもしれませんが、冬の幸福度はニットが決める、と思っています。寒さはまったく苦手だけれど、いいニットに袖をとおしたときの、心がふわっと満たされるあの感じ。これを何度でも味わえるなら、凍える季節も悪くないなと思えるのです。
極寒の早朝にロケへ出る日や、一日中デスクワークで編集部にこもる日。体にストレスをかけずに、機嫌よく仕事に打ち込みたいと思うときは、手持ちの中でも特に上質なニットを選ぶようにしています。
毎年、これがなくてはと心の友のように感じているのが、オーラリーのベビーカシミア。ごくシンプルなタートルネックですが、暖かさと風合いのよさは格別。しっとりなめらかな繊維が肌と一緒に呼吸しているような、体温が内側からじんわりと上がるような、飛びぬけて上等な着心地で、だからこれを着る日は、中にインナーを着るなんてもってのほか、素肌に直接、と決めています。
今年でもう4年目。週に一度は手に取るヘビロテぶりだけど、肌触りは変わらず型くずれもありません。優しい色味も大好きで、今年も一緒にいてくれてありがとうと声をかけたくなるくらい(笑)、愛おしくってたまらないんです」(三尋木さん)
名品:「オーラリー」のニット
▲ニット/本人私物
「オーラリーはクリーンで優しい色展開も他にない魅力。心安らぐカラートーンは、素材が上質だからこそ表現できるものなんだと、最近気づきました」ベビーカシミアニットのシリーズは、今年はクルーネック、カーディガン、キャミソール、パンツの4型がラインナップ。
「オーラリーは2015年にスタートした日本のブランド。素材にマニアックなまでのこだわりをもつことで知られています。デザイナーの岩井良太さんが日本国内から海外まで、良質な原料の産地を訪れ、生産者や職人と直接話し合いを重ねながらいちから素材をつくりあげているそう。公式サイトをのぞくと、各アイテムについてまずは素材の解説から始まっているのも好ましくて。
そんなオーラリーの中でも、ベビーカシミアのシリーズはシグネチャーといえる定番。内モンゴルの遊牧民が採取している希少なベビーカシミアの原毛を、現地に足を運び、信頼関係を築いたうえで仕入れているとのこと。こうした背景を知ると、いっそうの愛着が湧いてきます。
ちなみに私は、ニットはどうしても自分で手洗いしたい派。商品タグにはドライクリーニングとあるけれど、そこは自己責任で、このニットも毎年心をこめて手洗いしています。素肌に触れるものは人の手に預けずに、自分でケアしたくって。洗って、乾かして、スチームをあてる時間も心がゆったりと安らぐひととき。そんな一連の作業も含めて、いいニットがくれる幸福感が愛おしいのです」(三尋木さん)
2022年Oggi12月号「私とおしゃれのモノ物語」より
撮影/生田昌士(hannah) プロップスタイリスト/郡山雅代(STASH) 構成/三尋木奈保
再構成/Oggi.jp編集部