ファッションエディター 三尋木奈保が語る! モダンでクールなジュエリー
三尋木奈保
1973年生まれ。メーカー勤務後、雑誌好きが高じてファッションエディターに転身。装いと気持ちのかかわりを敏感にとらえた視点に支持が集まる。おしゃれルールをまとめた著書『マイ ベーシック ノート』(小学館)は2冊累計18万部のベストセラーに。
「好き」を仕事にする覚悟を込めた、シルバーのバングル。あのころの気持ちを忘れないように、これから先もずっと大切に
「ずっとずっと、憧れの人がいます。27歳で雑誌の仕事に飛び込んだときの、Oggiの編集長。経験のない私を最初に採用し育ててくださった、人生の恩人でもあります。
華やかな美貌は業界でも有名で、選び抜かれたモードな服を颯爽と着こなしてブランドのパーティへ出かける様子は、ドラマの一場面を見ているようでした。抜群のクリエイティビティで仕事に妥協なく向き合う一方で、発する言葉や物腰は、どんなときでもエレガントで。私が初めて出会った『かっこいい大人の女性』だったのだと思います。
当時、編集長がよくつけていらしたのが、ティファニーのボーン カフ。手首に沿うようカーブを描くシルバーのバングルで、一度見たら忘れられないインパクトがあります。そのころ、ここまで個性的なデザインはほかにはなかった、モダンでクールなジュエリー―― 今思うと本当に大胆でおこがましいのですが、私はそれを、こっそり真似して買い求めたのです。
新卒で勤めていた化粧品メーカーを辞めて、大好きなファッション雑誌の仕事をしたいと思いきった転身だったけれど、毎日それは不安で自信がなくて。会社員の安定した立場を捨てて、フリーランスとして一からやっていけるだろうか、寄る辺のない孤独感とプレッシャーで、押しつぶされそうな日々でした。
そんなとき、憧れの人と同じシルバーを身につけて、自分を奮い立たせたかったんだと思います。あれから21年。ボーン カフは、エディター人生をともに過ごしてきた、私にとってのお守りになりました」(三尋木さん)
「ティファニー」のジュエリーが持つ魅力
▲ジュエリー/すべて本人私物(ゴールドのブレスレットは現在取り扱いがありません)
デザイナー、エルサ・ペレッティによるボーン カフは、誕生から50年近くの歴史をもつティファニーを代表するシルバージュエリー。ブランドの頭文字「T」をアイコンにしたティファニー Tは、2014年に生まれた人気のコレクション。
「ちなみに、当時は編集長にお会いするたび緊張してボーン カフのことは打ち明けられませんでしたが、今ではありがたいことに、ときどき食事をご一緒させていただける仲に。昔話を楽しくできるようになったのが、しみじみうれしいのです。
5年くらい前にティファニー Tのゴールドブレスレットとピアスを購入し、ボーン カフとセットでよくコーディネートしています。ふっくらとボリュームのあるバングルに角ばった連なりのチェーンを重ねると、絶妙なコントラストが生まれます。シルバーとゴールドのミックスを違和感なく楽しめるのも、やはり同じブランドだからこそ。
あのころの憧れと、今の自分を重ね合わせながら、「好き」を仕事にする覚悟を込めたバングルをこれからも大切にしていこうと決めています」(三尋木さん)
2022年Oggi8月号「私とおしゃれのモノ物語」より
撮影/生田昌士(hannah) プロップスタイリスト/郡山雅代(STASH) 構成/三尋木奈保
再構成/Oggi.jp編集部