ファッションエディター 三尋木奈保が語る! 一生モノのストール
三尋木奈保
1973年生まれ。メーカー勤務後、雑誌好きが高じてファッションエディターに転身。装いと気持ちのかかわりを敏感にとらえた視点に支持が集まる。おしゃれルールをまとめた著書『マイ ベーシック ノート』(小学館)は2冊累計18万部のベストセラーに。
「単なる一枚の長方形の織物なのに、もしかしたら服以上にその人のおしゃれの基本姿勢が表れている気がするのです」
「ストールほど、買うときに気合いが入るものはありません。服のように流行のデザインやシルエットというものがなく、『素材感と色味』だけで勝負するものだから。自分の肌色にしっくりくる品のいいベーシックカラー、上等な素材を吟味すれば、この先トレンドが変わろうが、体型が変わろうが、ずっとずっと使えます。そう、『いいストール』は、飽きようがないんです。
私が愛用しているなかでいちばん古いものは、15年ほど前に買ったイタリアのストールブランドのもの。いまだにふわふわで肌触りは最高。よく見ると多少の毛羽立ちはありますが、それがいい味わいになっているのは、素材がうんと上質であることの証。手放す理由が見つかりません。安くはない買い物だったけれど、こんなに長く使えるなんて。うっかりどこかで失くさないかぎり、一生ものになる予感。いいストールは、費用対効果の高い素敵な投資、と思っています」(三尋木さん)
「アソースメレ」のストール
▲ストール/ともに本人私物
手前はアソース メレ定番の『ミドルゲージカシミヤニットストール』。一見地味なライトグレーだけれど、巻いてみると不思議と顔映りよく、どんな色の服にもなじむので、毎年いちばん登場回数の多い一枚。奥の『カシミヤファーニットストール』は、まろやかなモカ色が直球で好み。着こなしがぱっと華やぎます。暖かさが格別!
「そんな私のストール愛が、ここ数年ますます深まったのは、アソース メレというブランドと出合ったから。日本発のストールブランドは、これまであまり聞かなかったけれど、デビューして間もないプレスルームを訪れたとき、品質の確かさと色出しのセンスに、一目でファンになりました。無地のストールでも、目の詰まったものからざっくりしたローゲージ、シャギーまでさまざまな表情があり、それらを支える原料も、カシミア、アルパカ、キャメル… と、どれも極上の肌触り。
グレーとベージュというストールの定番カラーを、微妙なトーン違いで充実させていることにも目を見張りました。ストールは顔のいちばん近くにくるものだから、まとう人の肌色しだいで、似合うものは変わる。その繊細な、微差の色味を大事にするのは日本ならではの感覚だなぁ。そう思ったら、いっそう信頼を置けるようになりました。
また、長さも幅もたっぷりとった大判が多いのも、アソース メレの特徴。最初に巻いたときはややボリュームがありすぎかなと感じるけれど、コートと靴が重くなる秋冬は、これくらい量感があるほうが、全身バランスが格好よく決まるんです。
上質でありながら小粋で奥深く、今の空気をまとっている。ストールって、単なる一枚の長方形の織物なのに、もしかしたらそこには、服以上にその人のおしゃれに対する基本姿勢のようなものが表れる気がするのです」(三尋木さん)
2021年Oggi11月号「私とおしゃれのモノ物語」より
撮影/生田昌士(hannah) プロップスタイリスト/郡山雅代(STASH) 構成/三尋木奈保
再構成/Oggi.jp編集部