面白い上に勉強にもなる『スタートアップ：夢の扉』
タイトルの通り、起業、ビジネスモデル形成の過程が、初恋物語とともに描かれて行きます。
起業を考えている人にも、そうでない人にも勉強になるドラマです。チームを組む過程から、工学オタクのすごい技術をビジネスとして軌道に乗せていくにはどうしたらいいかまで。株式配分の考え方、会社買収の仕組みなどなど、専門用語も自然に頭に入ってきます。
そこに、主人公ソ・ダルミ（ペ・スジ）の両親の離婚で離れ離れになった姉との対立や、辛かった少女時代に慰められていた文通相手との再会、裏切りや厳しい現実も織り交ぜられていきます。『梨泰院クラス』が好きだった人なら、きっと楽しめる青春ストーリーだと思います。
注目は、投資家を演じている2番手イケメンのキム・ソンホです。彼はこのドラマで、ブレイクしました。
主人公のナム・ドサン役には、『ハベクの新婦』などで人気のナム・ジュヒョク。今までとは違う、青くて初々しいイメージで、恋愛歴ゼロの理系オタクを演じています。
2020年「田代親世’s ベスト3」・『ストーブリーグ』の大きな余韻
タイトルの「ストーブリーグ」とは、プロスポーツのオフシーズンに行われる、選手の契約更改や移籍話などの話題を指します。
このドラマの主人公は、スポーツ選手ではなく、運営側の人たちです。プロ野球で、4年連続最下位という貧乏球団「ドリームズ」。選手もコーチ陣も、万年最下位が当たり前なダメダメムードのところに、優勝請負人と言われる、ゼネラルマネジャーのスンス（ナムグン・ミン）がやってきます。
スンスが就任早々打ち出したのが、スター選手のトレードなど、予想外の提案でした。野球のことも知らないくせに何を言ってるんだと猛反対されても、データで明確に説明していきます。
部下のこともちゃんと見ているんです。自分を過小評価している人に、いや君はこういう成果をあげているでしょうとデータで言ってあげる。僕なんかコネ入社で実力がないと卑下する部下には、そんなことはない、誰よりも残って仕事してるでしょうと答えるという承認力、観察眼がすごい。
こういう「できる上司」いいですよね！ 会議でも、言わなくても通じるとかではなくて、ちゃんと説明する。なるほど、仕事って、こうやってやるものなんだと納得させられます。
最初は反対していた人たちが、どんどん彼を認め始めます。一番反発していた女性の熱血運営チーム長が、最終的にはいちばんの味方になっていきます。『梨泰院クラス』とテイストは違うけど、チームになっていくというところは似ています。
彼自身も、味方になってもらったり、守ってもらったりすることで、少しずつ変わっていくところに、観ているこちらも熱くなります。主演のナムグン・ミンは、このドラマで2020年のSBS演技大賞を取りました。
私の「2020年3大感動ドラマ」の1本です。『愛の不時着』『梨泰院クラス』、そしてこの『ストーブリーグ』でした。観ている最中からじわじわとわきあがってくる大きな感動を、体験していただきたいですね。
『ストーブリーグ』作品情報
［発売日］DVD-BOX1：2021/3/24、DVD-BOX2：4/2
［価格］各￥14,400（税抜）
［発売元］PLAN Kエンタテインメント
［販売元］ハピネット・メディアマーケティング
(c)SBS
笑って泣いて頑張りたくなる『賢い医師生活』
大学医学部の同期5人組が、同じ病院に勤務することになる。そこから物語が小気味よく始まります。40才の医師たちのドラマなんだけど、大上段に振りかぶるのではありません。クスリと笑わせたり感動させたりする、日常が詰まっています。
5人の同期がそれぞれ個性豊かです。ドライに見えて実は情があるとか、患者にのめりこんでどっぷり落ち込むとか。
いつもはバンド練習をしたりしてじゃれあっている、いい仲間です。しかし、ひとたび現場に入ると、それぞれが誠心誠意に仕事に取り組みます。すごくしんどい現場が多くて、大変なんだけど、プライドを持って働いている姿が、見ていて気持ちいい。こちらも、仕事を頑張りたいという気になってきます。
患者さんたちのエピソードにも、泣かされます。表面をなぞっただけではなく、人間というものがひとつひとつにちゃんと描かれているためです。
それぞれに、大変なことを抱えているけれど、みんな一生懸命に生きているいい人で、ほっとするんですね。子役やわき役にも、クスリとさせられるシーンがたくさん出てきます。
2021年にシーズン2も予定されています。人気シリーズ『応答せよ』と同じ、監督シン・ウォンホさんと脚本家イ・ウィジョンさんの作品です。既存の設定に乗らない、独特の面白みのあるトーンで、ほのかに浮かんでくる恋模様もいい。多くの人が、ハマってリピートしています。
在宅ワークの普及で、人と接することが減っている昨今。人の頑張りがわかりにくい中、ドラマで登場人物たちが頑張っている姿を見て、刺激が受けられますね。
取材・文／新田由紀子
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田代親世／たしろ ちかよ
韓流ナビゲーター。テレビ・雑誌などで、韓流ドラマを紹介している。会員制韓流コミュニティ「韓流ライフナビ」を主宰。
