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LIFESTYLE

2022.09.30

【たとえば、葡萄】働くこと、生きることについてアラサーの共感を呼ぶ、温かく前向きになれる小説に出合いました

「特段仕事に情熱を持てないまま、次が決まっていないのに退職。無職となり先行きが不安なまましかもコロナ禍で… という主人公がひょんなことから希望を見つけていく『たとえば、葡萄』(著/大島真寿美)は、主人公と同世代の働くアラサーとしてとても共感できる作品でした」。読書好きOggi専属読者モデル オッジェンヌの大枝千鶴によるブログです。

オッジェンヌ 大枝千鶴

仕事を辞めた主人公が迷いながらも夢を見つけていく物語

『たとえば、葡萄』は、直木賞作家の大島真寿美さんの新刊です。

あらすじは、主人公の美月28歳が、仕事を辞め母親の友人宅に居候するところから始まります。仕事を辞めるに至った心境、辞めたもののコロナ禍で先行きも不安で… そんな事柄が細かに綴られています。そんな主人公・美月が、さまざまな人や、感動するほど美味しい「ぶどうジュース」との出合いを通じて、自分のやりたいことを見つけていくお話です。

心がほっこり温かくなるような読了感。「私も、私自身がわくわくするものを」と、やる気メラメラ! とまでではないですが、楽しい未来に向かってあれこれ考えたくなるような…。物語のシチュエーションがとてもリアルで、明るい気持ちになれる小説です。

「コロナ禍で先が見えない中、退職…」

このフレーズだけ見て、ドキっとするのは私だけではないはず…。小説の主人公・美月28歳がまさにこの状況。新卒入社した大手化粧品会社を「もう続けられない…」と辞めてしまうのですが、この閉塞感、わかるような気がしますし、共感する人も多いはず。

若くして本当に「やりたいこと」を見つけて打ち込んでいたり、外的環境があって責任感を持って仕事をしていたり、はたまた働くことそのものの面白さに気づいて夢中になっていたり、そんな人も世の中にはいるだろうけれども、でも実際に周りを見渡してみると案外少ないような。会社で嫌な事があったとか、上司とウマが合わなくて辛いとか、そういうのが無かったとしても「面白い! 夢中です!」と言い切ってキラキラしている人って実は少ない気がします。

わたしには、そこまで思い入れがあったか、と聞かれたら、正直、なかった、とこたえるしかない。おんなじことを繰り返すうちに、新鮮味がなくなって、情熱みたいなものは少しずつ削られ、消えていった。って、そうはいっても、今回のこの新製品には、どういう特徴があって、どういう流行を取り入れていて、どこがどう新しいか、他社製品とのちがいはなにか、そういうことはよーく学んで、わたしもそれをいろんな人に熱く語っていたわけだけれども、でもそれは、それがわたしの仕事だからやっていただけで、個人的な興味や熱い思いに突き動かされてやっていたわけではなかった、と思う。

作品中に出てきたこの言葉に私はかなりぐさっときました。私自身もこういう気持ち、わかってしまうから。仕事でその立場になったら、そういうポーズを取らなければいけない。今の私の仕事はこれ、今の私の役割はこれ、と言い聞かせている。良くも悪くも自分を諭して鼓舞し、なんとか足を前に動かしている時があるから。仕事にも慣れてきたアラサー世代、どうしてもやりたいことがあって起業したような熱い人でなければ、この感覚に共感する人は多いのではないでしょうか。

花と書籍が並んでいる様子

▲思わず見入ってしまう装丁の可愛さも魅力です。

母の友人宅に居候。主人公をあたたかく支える大人たち

主人公・美月は、とりあえず収入がなくなったので、母の友人宅に居候する… というのは個人的には結構びっくりな展開だなと感じました。でも異なる世代なのに、頼れる友人のような存在って、とっても貴重!

実は主人公・美月の母親やその友人達が登場する小説が10年以上前に大島さんによって書かれているんです。その作品は、ドラマ化もされた『ビターシュガー』。

『ビターシュガー』は、女性たちが失踪したり、離婚したり、再婚したり。そんなドタバタを乗り越え育まれるアラフォー女同士の友情。今回の作品『たとえば、葡萄』では、『ビターシュガー』に登場する女性の娘・美月を中心に、再び魅力的な女性たちの姿や思いが温かく描かれています。

主人公の感情や行く末がメインの小説ですが、この大人たちの友情もまたいい。学生時代のようにたくさんの時間を一緒に過ごしているわけではないけれど、私達には友人がいて、そこにはちゃんと友情がある。物理的な距離があったり、コミュケーションが頻繁ではなかったり、色々な時期がありながらも関係性は続いていいる。「友人の子供」のことも小さなころから知っていて、その子達ともまた友人のように話している。

私も似た関係性を思い出します。小説を読みながら、改めてそういう周囲とのつながりに思いを馳せたのですが、とても貴重なものなのだと感じることができました。

ものづくりに対する考え方とそこから見出された希望

主人公の美月は大手の化粧品会社で働いていたのですが、次々を新商品を世に送り出す立場でありながら、このように描写されています。

ずるずると、とにかく売れるもの、ターゲットの消費者の心を掴むもの、思想というなら、そのすべてがそこに集約されてしまって、売り上げのグラフしかみようとしていなかった。まあね、会社ってそういうものだしね、わたしはその売り上げからお給料をもらっていたんだしね、下っ端の一社員に意義を唱えるなんてできるはずもなかったんだけど。

わたしだって、一応、ものを作って売る側の人間だったのに、なんか、そういうこと、すっかり忘れて、ただ、商品、ってものを扱っていたような気がする。びっくりするくらい感覚が麻痺していた。

ちょっと、頭を殴られたような気持ちでした。私自身もそうだし、ほんとにこれって、資本主義の罠のような…。大企業になればなるほど、きっとこうなのかもしれない。私は新卒採用の面接を担当することがありますが、「魅力的な商品をユーザーに!」とか「素晴らしいサービスを世の中に提供したい」というキラキラした話を彼らから聞くたびに、こちらも前向きになれて嬉しいし楽しい。でも、そうやって目を輝かせて入社してきた人たちも、いずれこうした“会社員的思想”になってしまうのかな。どんどん「感覚が麻痺」してくるのかなと、ハッとさせられたのと同時に、これを見事に主人公の心情として文章で表現する作者の筆力にも感動しました。

小説の中で美月が変わっていくきっかけは、小さな頃から知り合いの「セブン」という男子が大きく影響しています。ワインにするためのぶどう作りに夢中になっているセブンは、仕事を誇らしげに語り、ぶどう=彼の「創造物」への熱意や愛情をもって生きている。でもセブンのその姿勢に感化される、という単純な話ではなく、そのセブンが作ったぶどうを原料にした「ぶどうジュース」を飲んで、その美味しさに感動して… というところも地味にいい。結局自分を突き動かすのは、自分自身が感動した「モノ」や「コト」だよね、そうだよね! と、私自身も納得しました。

迷えるアラサー世代こそぜひ読んでみて欲しい!

なんとなくモヤモヤした閉塞感。コロナだしね…. のような勢いのなさを自分で感じてしまうことが今ってあらゆる場面である。一度自分がそう感じてしまうと、なんか周囲ばかりがキラキラして見え、そうじゃない自分に劣等感を感じてしまう。こんな気分になったことがありません? 私はあります。そこに共感してもらえる人には、ぜひ読んでほしい一冊です。

主人公に共感しつつ、実は誰もが、身の回りや周囲の人間関係から勇気をもらって、ちょっとずつ色々な事に興味を持って、そしてこれをやりたいのかも、というものに出合っている。時には停滞しながら、時にはイキイキしながら。「生きていくってそういうものだよな」と、私は読みながら感じていました。

Oggi専属読者モデル・オッジェンヌ、というキラキラ女子の代表みたいな事をさせてもらっている私でさえそうです。毎日グズグズしている。でも今回のような素敵な小説との出合いがあって、それに励まされて前に進める。こういうきっかけがあるから、読書ってやめられない! 本は最も私を勇気づけ、希望を与えてくれる存在です(^^)

本を読む女性

大島真寿美『たとえば、葡萄』(小学館)発売中

購入はこちらから

Oggi,jpでは、近日中にこの作品の試し読みがスタートします! お楽しみに♡

■「たとえば、葡萄」小学館 発刊記念イベントも開催されます

ゲスト:直木賞作家 大島真寿美さん、担当編集 片江佳葉子さん

開催日:2022年10月15日 土曜日
開場時間:18:00
開演時間:18:30~20:30
隆祥館書店多目的ホ-ルからリアル(限定50名)&リモ-ト(定員100人)で配信(要予約・事前購入制。申込み順)
申し込み方法:隆祥館書店 店頭もしくは、メ-ルで、名前・住所(郵便番号含む)・電話番号を明記の上、お申込み下さい(メ-ル送信及び遠方の方への送品のため)
参加費:書籍付きリアル・トークイベント3,500円(参加1,520円+本代『たとえば、葡萄』1,980円)、書籍付きリモート・トークイベント3,600円(参加費1,120円+『たとえば、葡萄』1,980円+送料及び 手数料500円)、書籍なしリアル・トークイベント2,500円、書籍なしリモート・トークイベント2,000円

申し込み・お問い合せ先:隆祥館書店
TEL:06-6768-1023
住所:大阪市中央区安堂寺町1-3-4
最寄り駅:谷町6丁目 7番出口向かい
メ-ル:ryushokan@eos.ocn.ne.jp

さらに詳しい情報は隆祥館書店公式サイトでご確認ください。

書籍 たとえば葡萄 装丁

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オッジェンヌ・大枝千鶴さん

オッジェンヌ 大枝千鶴

2015年からOggi読者モデル「オッジェンヌ」として活動。営業職という仕事柄、通勤服は好感度が最重要事項。最先端のIT企業で働きながらも歌舞伎と着物が大好きという古風な34歳。一級きもの講師。Instagramアカウントはこちら:@chizuru_oeda


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Oggi5月号46ページに掲載しているアルアバイルのライトベージュのジャケットの値段に誤りがありました。正しくは¥49,500になります。
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